数十分の芝居が終わり、娘役の女の子に話しかけに行く人の流れから逃れて歩いていると、おばあさんがふらふらとした足取りで歩いているのが見えた。
慌てて側に駆け寄る。倒れそうになる寸前で、ぎりぎり支えることができた。
「だ、大丈夫ですか!」
青い顔をしたおばあさんが苦笑いで私を見上げる。
「ごめんなさいね、ちょっと気分が悪くて」
苦しそうに息を吐くおばあさんを支えながら、ベンチのある木陰へと移動する。
袂から手ぬぐいを取り出しおばあさんの手にそっと握らせれば、おばあさんは申し訳なさそうに笑った。
「ありがとう、少し楽になった気がするわ」
「お……お水、入れてきます」



