儀式は滞りなく終了し、社頭は多くの人で溢れていた。 本殿の前には簡単な舞台が設置され、芝居が行われている。桃色の着物を着た私と同い年くらいの女の子が、舞台に立っていた。 「今年の娘役は、渡辺さんのところの詩子ちゃんだって」 「来年は高校生でしょう? 大きくなったのねえ」 芝居を見ながら参拝者が話している。 三門さんからも「見ておいで」と言ってもらっていたので、隅に座って鑑賞していくことにした。 芝居の舞台は平安時代で、平民の娘と貴族の男が恋に落ちる話らしい。