「だから大晦日と三が日を含む師走の二十八日から七日間だけ、昼夜を問わず両方の種族が参拝できるように、ひとつのお社を開ける。開門祭はそのもうひとつのお社、『おもてらのお社』を開けるお祭りだよ」
いつの間にか神楽殿の裏まで歩いてきていた私たち。ババは神楽殿のそばにいる人だかりを指さした。
「開門祭で披露する『結眞津々実伝説』の芝居を練習しているんだ」
人だかりの真ん中で私と同い年くらいの、狐の耳をはやした少女が琴の音に合わせて軽やかに舞を舞っていた。
そのそばには三門さんの姿もある。
「妖たちは開門祭をいつも楽しみにしているからねえ、毎年前日からこのどんちゃん騒ぎなのさ」
楽しげに笑ったババは「ここで待ってな」と言い残すと、人だかりの中に突き進みんでいった。



