そういった三門さんに、先程の光景を思い出した。

 三門さんが難しい言葉を唱えた途端、少年から黒い煙が上がったあの光景だ。


 「三門さんは……何をしたんですか?」

 「穢れを祓うまじないを唱えたんだよ」


 そう言った三門さんに、私は目を丸くした。

 穢れを祓うまじない、ということは、三門さんは陰陽師のように魔物を調伏したということなのだろうか?


 三門さんは私の考えを察したのか、「僕たちは陰陽師とは少し違うからね」と笑う。

 恥ずかしさにちょっと頬が熱くなった。


 「言霊の力は、発した言葉が具体的だと強くなる。だから、どんな願いがこもっているのかを表した祝詞や呪が効果的なんだ。『痛いの痛いの飛んでいけ』も、一種の呪なんだよ」


 他にも日常的に使っている呪は沢山あるんだよ、と方目を瞑った三門さんに目を丸くした。


 「……まあ、そんなふうに、ある程度ならなんとかしてあげられるんだけど、やっぱり妖を知らない人は下手に関わらない方がいい。だから、裏の鳥居は近付いちゃ駄目なんだ」