「ありがとうっ……!」


 そう叫びながら走り去っていく葵に、私も大きく手を振り返す。

 その背中が見えなくなった途端、妖の子供たちが私のもとに駆け寄ってくる。


 「巫女さますごーい!」

 「なんでわかったの! ねえ、なんでなんで!」


 子どもたちの頭をそっとなでながら、集まってくる他の妖たちに笑いかけていたその時。


 「麻ちゃん……!?」


 聞きなれた声がして辺りを見渡すと、人だかりがすっとひらける。血相を変えて駆け寄ってくる三門さんの姿があった。


 「青女房が社務所に飛び込んできて、明里と麻ちゃんが勝負するって……っ」


 私の前まで来ると、三門さんは膝に手を付き肩で息をしながらそう言った。

 そして勢いよく顔をあげて私の肩を掴む。