それを葵に向かって放り投げる。両手でそれを受け取った葵は、「え」と目を瞬かせる。


 「……アンタらの勝ちだよ」


 三秒ほどの沈黙。そして周囲から「わーっ」と歓喜の声が上がった。

 目を見開いていた私たちは、お互いに顔を見合わせた。


 「あ、麻っ、勝った、勝った!」


 瞳に涙を浮かべて私の首に飛びついてきた葵を、驚きながら受け止める。


 あってた、あってたんだ……。


 葵の背中に腕を回し、飛び跳ねて声をあげた。


 「あ、葵! マサシさんの所、行っておいで!」


 簪を握りしめる葵の手に、自分の手を重ねる。無事会えますように、と思いを込めて握りしめた。

 涙をぬぐいながら何度も頷く葵の背中を押せば、葵が走り出す。