「あ、明里っ……さん。お願いがあるんです」

 「やだね」


 しゅるしゅると首が戻っていって、そして元の長さに戻る。

 体ごと振り返った明里は、意地悪い笑みを浮かべた。手にしていた煙管をふかすと、こちらに向かって煙を吐く。


 「どうせ、この『蓬莱の玉の枝の簪』を貸してほしいって話だろう? やなこった」

 「頼む! 一晩だけでいいんだ!」


 葵が一歩前にでて身を乗り出した。明里はふんと鼻で笑うと、そっぽを向いてしまう。

 葵が悔しそうに唇を噛んだその時。


 「まあ、貸してやらんこともない」


 え! と私たちが顔をあげる。


 「私と勝負しな。勝ったら一晩だけ、この簪を貸してやろう。負けたら……そうだね、その巫女の娘の黒い髪をもらおうか」