深夜、丑三つ時と呼ばれる時間に合わせて目を覚ました私は、パジャマから巫女装束に着替え社頭に出た。
急ぎ足で階段を降りて約束の場所へ向かう。
鳥居にもたれかかり月を見上げるその姿を見つけ、慌てて歩み寄った。
「あ、葵……っ」
気が付いた葵が振り返る。天狗面を少しだけずらし、私に微笑んだ。
「行こう」
手を取り合って、階段を駆け上がった。
「巫女さまーっ、明里いたよ!」
「青女房の屋台の前にいる!」
階段の上から妖の子どもたちが手をふっている。それに大きく手を振り返し、お礼を言った。
「ろくろ首の明里が持ってるの。貸してほしいって一緒に頼んでみよう」
「できるのか? あいつ、性格悪いぞ」
そう言われて、途端に不安が胸の中に広がる。



