「なんで、せっかく会えたのに」


 切なげな、今にも消えてしまいそうな声だ。

 ああ、葵は。そうか、葵はまだ、マサシさんのことが。


 「私、あいつに何もっ……」

 「マサシさんの心なら、た、助けてあげられるよっ」


 思わずそう叫んだ。


 そうだよ、何もできないなんて違う。

 私が三門さんにしてもらったように。「大丈夫、大丈夫」と背中を擦ってもらったように。「味方だよ」と手を差し伸べてくれたように。

 たったそれだけ、たった一言で私は救われたんだ。


 「ほ、『蓬莱の玉の枝の簪』! それなら、葵でも少しの間なら人になれるよ、マサシさんと目を見て話せるよっ」


 葵がぼんやりとした目で私を見る。