「あ、葵っ、待って……!」


 数メートル先を走る葵を追いかける。何度かつまずきそうになり、そして葵の足が止まった。

 その肩が小刻みに震えている。


 「……私でも助けられないって、どういうことだよ」


 葵が低い声で呟く。


 「そ、それは」

 「シュジュツってなんだよ、どんな奴だよ!」


 天狗面を土の上に叩き付けた葵は、腕を目元に強く押しあてた。嗚咽が聞こえる。


 ああそうか、葵はなぜマサシさんが助けを求めたのか知らなかったんだ。

 昔みたいにマサシさんを助けられると、いじめっ子を倒した時のようにやっつけられると思っていたんだ。