「ごめんね、こんな話に付き合わせてしまって。おかしなことを言っていると思うだろう? 僕もそう思うよ」


 私は小さく頭を振った。


 「あ、あの……『助けてほしい』って」

 「ああ……手術をするんだ。ここの」


 胸をとんとんと叩いたマサシさんは、水面を見つめる。


 「成功するか失敗するかは半々って聞かされて、大人のくせにとても怖くなってね、それで気が付いたらこの場所に来ていた」


 寂し気な表情に言葉を失う。

 柔らかく微笑んだマサシさんから目を反らし、視線を泳がせた。


 「こればかりは、葵でも助けられないのにね」


 ざっ、と砂利が踏みしめられる音がした。弾けるように振り返れば、葵がそこに立っている。

 私が声をかける前に、その場から走り出した。