優しい顔をしてそう言ったマサシさん。懐かしそうに目を細めた。


 知っている、あの夢の通りだ。

 葵がいじめっ子たちを倒して、でもマサシさんはそれを望まなかった。なぜならマサシさんは、葵が傷付くことを望んでいなかったから。


 「でもね、彼女はある日突然いなくなった。本当に突然、まるで始めからいなかったかのように」


 空を見上げたマサシさんは、遠い目をして呟いた。


 「ううん、違う。葵はいなくなったんじゃない、僕が葵のことが見えなくなったんだ」


 はっと息を飲んだ。

 それではまるで、マサシさんは葵の正体に気が付いているような言い方じゃないか。


 「僕が葵の正体を知っていることに気が付いたから、消えてしまったのかな」