次の日。二度寝しようと布団にくるまっていると母さんに叩き起こされて、俺は追い出されるようにして家を出た。
「悠真おはよー」
「佐原、数学の課題やった?」
俺を見つけては声をかけてくる友達たちと歩きながら校門を通ると、視界に海月の姿を発見した。
海月はいつ見てもどこにいてもひとりきり。声をかけられるわけでも声をかけるでもなく、淡々と歩き進めるスピードはいつも速い。
「おはよ」
俺は追い付くために小走りで近づいた。
海月はすぐに横目で俺のことを見たけれど、迷惑そうな顔をして足早に昇降口へと入っていく。
海月に無視されるのは慣れているけど、それでもこの前は一緒にケーキを食べにいったし、三時間くらい向かい合って喋った。
だから少しは距離が縮まったかもと期待していたけど、あの日以来実は海月はずっとこの調子。
廊下で見かけても俺から逃げるように教室に入ってしまうし、メッセージは既読すらつかない。
なんだかまた振り出しに戻ってしまったような気がする。