「インドアなお前が最近友達の家で勉強してくるって夜まで出掛けて、おまけに晩めしもいらないとか言う日もあるし、普通におかしいだろ」

まあ、母さんは微塵も疑ってないみたいだけど。


「健全に受験勉強してるかもしれないじゃん」

「お前に蕎麦屋の友達はいねえ」

「なんでそこまで……」

「俺の嗅覚なめんな」


帰ってくる弟の身体から毎回蕎麦屋の匂いがぷんぷんしてた。おそらく欲しいゲームかなにかがあって始めたんだろうけど、まだ中学生だし法律ではバイトができる年齢じゃない。


「なんで年誤魔化してまでやるかね。高校入ってからならいくらでもできるのに」

「いくらでもできるのに兄ちゃんはやらないね」

「……俺は勉強にい、いそ、いそんでるんだよ」

「勤しんでるね。慣れない言葉は使わないほうがいいよ」


相変わらず頭だけは賢くて困る。ちょうどゾンビにやられてゲームオーバーになったので、俺はカップラーメンのフタを開けて麺をすすった。


「食べにくれば。たぶんサービスできるよ」と、弟も同様にラーメンを食べ始める。


「蕎麦アレルギーの俺を殺す気か」

好き嫌いしないでなんでも食う俺が唯一ダメなものが蕎麦。身体が受け付けないというか、生まれつきそういう体質。