その日の夕方、私はバイト先である蕎麦屋にいた。
あのあと、私たちは本当に早退して、美味しいと評判のケーキ屋へと入った。
店内で紅茶を飲みながら私はショートケーキを注文して、佐原はチョコケーキとレアチーズケーキといちごタルトとマカロンふたつ。
そんなに食べるのってビックリしたけど、佐原はあっという間にすべてを完食してしまい、かなりの甘党だということを知った。
佐原は色々な話をしてくれた。
いつも遊んでるバッティングセンターの話やハンバーガーショップで友達とどれだけ食べられるか競いあった話。
それから中学生の時に一目惚れした教育実習の先生の話や学校に忍び込んで連続三日間泊まった話。
どれも佐原は楽しそうに喋って、私はどれも大切に聞いた。
結局、バイトに向かう時間まで店にいて、私はケーキをひとつしか食べてないのに今もまだ口の中が甘い気がする。
「海月ちゃん」
「え、は、はい」
洗い物の手を止めて振り向くと、清子さんが慌ただしい様子でカウンターから顔を出していた。