そんな荒れた裏庭を見つめながら私は踊り場の手すりを掴んだ。
あの家に住むようになってから六年。月日にすれば長いけれど、私にとってはあっという間だった。
人の人格は育った環境で決まる、なんて言うけれど、私の性格はきっと母と過ごした10歳までで完成されてしまっていた。
同じ屋根の下にいても会話なんてなく、母は私を置いて男に会いにいく。テーブルの上に置いてあるカップラーメンをひとりで啜り、電気もつけずにひとりで膝を抱えた夜は数えきれない。
寂しいと思うほど寂しさが増し、孤独だと思うほど明かりがついてる家が羨ましかった。
だから私は、そうやって思うこともやめた。
喋らなくてもひとりでもまったく平気だし、寂しさなんて感じない。
そんな愛嬌の欠片もない私を晴江さんや忠彦さんが可愛がれないのは当たり前で。
私がいとこだとバレたくない美波の反応も、当然だと思ってる。
……はあ。このまま授業をサボってしまおう。ついでに二限目の体育もここで。
私ってなにしに学校に来てるのかな。その前に……学校なんて来る意味はあるのかな。だって私は――。
キィィィ……。
と、その時。非常階段の扉がゆっくりと開いた。見回りの先生だと思い身構えていると……。
「よう」
そこにいたのは同級生の佐原悠真(さはらゆうま)だった。