「私に構うのやめたんじゃなかったの?」

「え?」

「開会式のグラウンドで……」


言いかけて途中でやめた。だってずっと気にしていたんだって思われるのが恥ずかしくて。


「あーだって人いっぱいいたし」

またチクリ。


「いや、人がいるところで海月と話したくないとかじゃねーよ。でも、お前に迷惑かかってまた変なことされるんじゃねえかって思って……」

だから声をかけずに目を逸らした。そう言いたそうに佐原は頭をガシガシと掻く。 


「でも俺が気にしててもやるヤツはこうしてやるって分かったから、もうしない。たった一瞬お前のこと避けただけで、試合中もそればっか考えて……。ダサいくらいハンドして、一発退場したよ」



佐原はなにも隠さない。

自分が思ったことをなにも隠さずに言う。

私が一番、不得意なことだ。



心が、引き寄せられていく感覚。

……なに、これ。なんなの。


ここではっきりと一線を引かないと、手遅れになる。

そう思った。



「さ、佐原……」

「帰ろう」


突き離そうとした手は、いとも簡単に掴まれてしまった。