「わ、分かったわよ」

女子たちは逃げるようにして、一組から出ていった。


「……はあ」

再び静かになった廊下で、佐原がため息をつく。


顔を出すべきかそれとも――。


あれこれと迷ってる中で、急にポケットの中のスマホが鳴った。しかもちょうどポケットの位置が壁と密接になっていて、バイブ設定にしているのにブーブーブーと鈍い音が廊下に響いてしまってる。


「立ち聞きかよ」

ハッと気づくと、耳にスマホを当てた佐原に見つかっていた。

佐原がスマホの電話を切ると私のスマホが切れたので、着信は彼からのものだと分かった。


「いつからいた?」

「……最初から」

「じゃあ、全部聞いてた?」

「うん」


でも、決して立ち聞きしようと思ってたわけじゃない。ただここから出ていくタイミングを見失っていただけで……。


「カバン。取られてるものがないかどうか一応、確認して」

「……うん」

「俺のせいで本当にごめんな」


なにそれ。それを言うなら私でしょ。

私と関わったせいで、今まで築いてきた佐原の交遊関係にも亀裂が生じてる。

私よりもずっと佐原のことを知ってる友達たちが、佐原の変化についていけてない。