「ねえ、なんにも入ってないよ」
開いているドアから確認すると、そこにいたのは他のクラスの女子たち。なんで一組にいるんだろうと不思議に思いつつ、女子たちが囲んでいた席は私の場所だった。
「やっぱいくらぼっちでも財布とかスマホは置きっぱなしにしてないよね」
漁っていたのは私のカバン。貴重品は持ち歩くようにしてるからお財布は手元にあるし、もちろんスマホも。
「IDとか盗んで情報とか流失させてやろうと思ったのにさ」
「はは、やりすぎ」
「だって私この前、悠真に告って振られたんだよ?なのに悠真と噂になってる相手がこいつなんて納得できないじゃん」
もしかしたら一連の嫌がらせはこの子かもしれないと直感で思った。
こういう場合はどうしたらいいんだろう。
教室に入って佐原とはなんにもないなんて言ったところで、私のものを盗もうとしてる人が静かになるとは思えないし、私に構ったところで時間の無駄だよなんて言えば逆上させてしまう気がする。
「あー本当にムカつく!」
ドンッと私の机を蹴ったところで、廊下から足音が聞こえてきて、思わず柱の裏に身を隠してしまった。
スタスタ、と静寂の中で響く音は、一組にいる女子に気づいたように教室の前で止まった。
「なにしてんの?」
……ドクン。
声を聞いた瞬間に、心臓が大きく跳ねた。
柱の影から確認すると……歩いてきたのは佐原だった。