上履きを片方草むらから取ってくれた時、少し冷たくしすぎただろうか。
だって、佐原の家に行ったり、晩ごはんを一緒に食べたり。私が望んだことではないけれど距離が近くなってしまってる気がして、一線を引き直すつもりで冷たく接した。
怒っているのか。それともただ単に私に構うことをやめただけなのか。
どっちにしても都合がいい。
早く佐原が離れてくれないかなって思ってたし、友達になろうと宣言されて、友達だからといいように言葉を武器にされたら厄介だなって思ってたし。
だから別にこれでいいはずのに、胸が一瞬だけチクリとした気がして、触ってみても特になにかが刺さっているわけじゃない。
グラウンドの奥へと歩いていく佐原の背中を少しだけ見て、それでもチクリとした理由は探さずに、私は体育館へと向かった。