「なんで?」

佐原はすぐにムッとした表情に変わる。いつもみたいに無視してたらよかったものの、今のは自分でも声を張り上げすぎたと思う。


「俺はバイ菌じゃねーぞ」

「そういう意味じゃ……」と、言いかけて唇を止めた。


いや、そういう意味でもいいじゃない。生理的に無理だからと言ってしまえば、これ以上つきまとわれることはない。それなのに、私は言葉を探すように黙ったまま。

そんな私を見て、佐原は深いため息をはいた。


「お前は俺が電話したいって言ってもダメだって言って連絡してもほとんどが無視。俺がしたいと思うことをことごとく拒否するお前の言うことを俺も聞かないことした」

「……なにそれ」

「だから俺はここに座る。座っていい?とか聞かずに座る」

そう言って、佐原は本当に私の隣に座った。


身勝手で、口を尖らせて拗ねている彼は子どもみたい。

……調子が狂う。だって、私が想像できないことを言ったりしたりするのが佐原だから。