『検査したところ腫瘍は悪性でした。本来ならすぐにでも入院してもらって手術をしなければいけないのですが、岸さんの腫瘍の場所が非常に悪いうえに、かなり肥大も進んでいるので手術はすでに不可能な状態です』

その瞬間ズキンと頭が傷んで、きっと私の中でなにかが暴れてるんだって分かった。



『薬で痛みを和らげることも進行を遅らせることもできます。でも現時点では有効な治療はなく……』

医者が言葉に詰まった。



どうしようもできない。もう手遅れ。 

そう言いたいのに、言えない空気を私は全身で悟っていた。


だから自分から聞いた。遠回しにされるのも、説明が長引くのも嫌だったから。



『私、死ぬんですか?』


今までうるさかった心臓がこの時だけは静かになった。



『腫瘍の進行を見ても、余命はあと三か月だと思ってください』

 

もう動揺はしなかった。

それは、怖いくらい。



それから病院を出て、私はフラフラと歩いていた。病院に来た時は午前中だったというのに外はすっかり暗くなっていて、星がひとつも見えない曇り空。


脳腫瘍、悪性、死。

その三つの単語を何度も繰り返して考えた。