そして、テレビで見たことしかない頭部CTやMRI検査などを流れ作業のようにさせられ、再び最初の診察室へと案内された。
『とても大事な話があります。ご家族と連絡は取れますか?』
予想以上に時間がかかったことと、訳も分からない機械に次々と寝かされたことで私はすごく不機嫌だった。
けれど、診察室の空気がすごく重たくて、私はやっとただの風邪ではないのかもしれないと、思いはじめていた。
家族と聞かれて、もちろん晴江さんや忠彦さん、美波のことは頭に浮かんだ。でも私の答えは……。
『家族はいません』
『親戚の人は?』
『いません』
『では、今あなたの保護者になってる――』
『大丈夫です』
私は医者の声を遮るように言った。
『大事な話なら私ひとりで聞けますから大丈夫です』
本当はかなり緊張していた。
でも、なにか良くない病気でもバイトで貯めたお金があるし、薬代だって出せるし、この距離なら通院もできる。
そうやって安易に考えていたことを医者は次の言葉であっさりと崩した。
『あなたの病名は脳腫瘍です』
……ドクン。
今まで聞いたことがない音がした。