私はカウンターになっている椅子に座り、窓から射し込んでくる夕日をぼんやりと見つめていた。
〝まだ高1だからと気を緩めずに将来のことも徐々に考えていこうな〟
先ほどの先生の言葉を思い出して、ふっと鼻で笑ってしまった。
私に将来なんてない。
あるのは、三か月という曖昧な有余だけ。
自分の身体に違和感を感じたのは高校に入学してすぐのことだった。
急に目眩がしたり、朝起きると手足が痺れていたり、瞳にフィルターがかかってるみたいに視力もがくっと下がりはじめた。
最初は栄養バランスが片寄ってるせいかなとあまり気にしなかったけれど、ある日猛烈な頭の痛みに襲われて駅前の病院へと駆け込んだ。
診察されるまではただの風邪だろうと思っていたけど、症状を伝えると『もっと大きな病院で詳しく調べたほうがいい』と言われ、隣町の大学病院で再診。結果は……。
『頭にピンポン球よりも大きな腫瘍があります』
その時、正直なにを言ってるんだろうとしか思わずに、『どうやったらなくなりますか?』と淡々と質問したことは覚えてる。
『もっと詳しく検査してみないと種類が分からないから、明日また来てほしい』と言われ、『薬だけ出してもらえればいいんですけど』と苛立つ私をなだめるように医者は『明日来てください』と深刻な顔で言った。