面談が終わる頃には、ちらほらと廊下にいた生徒たちもいなくなっていた。先生は『では、なにかありましたらいつでもご連絡ください』と笑顔で職員室へと向かっていく。
『帰り、どうする?』
晴江さんとふたりきりになり、先生と話していた時よりも低い声で聞かれた。
今日は忠彦さんは仕事で遅いらしく、晩ごはんは外で食べようと美波が朝からせがんでいた。
おそらく美波は昇降口で待っている。帰りはそのまま晴江さんの車に乗り、ぶらぶらと買い物をしたあとに美波が行きたいと言っていたパスタ屋で晩ごはんを済ます予定だろう。
私も今日はバイトが休みだし、夜は時間をもて余すしかない。
でも私は『寄るところがあるので大丈夫です。晩ごはんは適当に食べます』と言って、晴江さんの車では帰らなかった。
そして、寄るところなんて当然あるわけがないけれど、このまままっすぐに帰る気分にもなれなかったので、なんとなく図書室に来たというわけ。