『姉の責任は私の責任だと思っていますので、この子を預かると決意した時から美波と同じように育てようと決めました。私自身もうひとりの娘だと思っているので、この子も同じように私の気持ちを感じてくれていたら嬉しいのですけれど……』

私はふたりのやり取りを聞きながら、誰かが書いたであろう机の落書きをただずっと一点に見つめていた。


大人はこういう場面ではいいように取り繕うことは分かってる。でもちょっと演技をしすぎじゃないかな。

私はいい子なんかじゃないし、コミュニケーションは不足してるし、なにより美波と同等に扱ってるなんて絶対に嘘。


――『無責任なことを簡単に言わないで!』

私を正式な娘として受け入れなかったのは晴江さんなのに。


でも、私はその判断が間違っていたとは思わない。

養子に迎えてしまえば、否応なしに家族になる。そんなことを同情や世間的な目に捕らわれて判断しなかった晴江さんは正しい。


『岸。過去には色々と苦労もしたと思うけど、しっかりとこの愛情を受け止めていつか恩返ししないとダメだぞ。だからまだ高1だからと気を緩めずに将来のことも徐々に考えていこうな』


私にとってこの面談はなんの意味もない。

だけど余計なことを言って長引くほうが面倒だったので、私は『はい』と気持ち悪いぐらいはっきりとした返事をした。