それから数日が経って、私は放課後の図書室にいた。実は今日、例の三者面談が行われて先ほど終わったばかり。

ひとりの生徒につき約15分ほどの面談は二日間に分けて実施され、事前に頼んだとおり私の順番は一番最後だった。


話す内容といえば、普段の生活態度や将来の進路のこと。勉強のことや部活動のことなど生徒によって様々だったみたいだけど、私の場合は家庭での様子を一番に尋ねられた。


『とてもいい子ですよ。いい子すぎてあまり気持ちを言わない性格ですが、しっかりとコミュニケーションは取るように心掛けています』


教室の中央にふたつの机を向かい合わせただけの簡易的な空間は、足を踏み入れた時から重苦しかった。


晴江さんの格好は昨日美波の面談をやった時とは違い、全身黒色できっちりとした洋服。普段はつけないパールのイヤリングをして、とても〝いいお母さん〟というような見た目をしていた。


『そうですか。岸さんのご家庭の事情は十分理解しています。このご時世で自分の子どもでも上手く向き合えない人がいる中で、とてもご立派なことをされていると思います』

まるでマニュアルでもあるんじゃないかと思うほど、先生も慎重に言葉を選んでいるように感じた。