外は気温がひんやりとしていて冷たかったけど、温かいものを食べたおかげで身体がぽかぽかしている。
「じゃあ、俺、こっちなんで」
三鶴くんは耳にイヤホンを装置しながら歩きだす。
スマホを確認すると、時計は10時になろうとしていた。いつもより遅い時間だけど、きっと家では美波がまだ起きてる。
あと一時間ぐらいブラついて帰ろうかな。でも、やっぱりあんまり体調がよくない。
さっきまで普通だったのにひとりになると痛みだす頭痛はきっと半分は精神的なものなんだろう。
薬飲んでから、何時間経ったっけ。
もうさすがに飲めるよね。コンビニに寄って水を買ってそれから……。
「岸さん!」
急に名前を呼ばれて振り向くと、反対方向へと歩いていった三鶴くんが戻ってきていた。
「え、ど、どうしたの?」
忘れ物?いや、三鶴くんから預かってるものもなければ、私が預けてるものもない。
「これ」
三鶴くんは片耳だけイヤホンを外して、私になにかを差し出してきた。
「なに……?」
「はちみつレモンの飴です。なんかいつも元気ないんで」
「え、あ……ありがとう」
戸惑いながら受け取ると、三鶴くんは再びイヤホンをつけて「じゃあ」と、歩き去ってしまった。
手の中にある小さな袋には喉飴と書いてあった。
痛いのは頭なんだけどな、と思いつつも、私はさっそく飴を口の中で転がす。
……甘い。