「まあ、いいわ。そういうことも含めて来週の三者面談で担任の先生に色々お願いしておくから」

本当はあることを隠しておきたかったけど、美波がプリントを見せてしまったから失敗に終わった。

まだ高一だっていうのに、なんで三者面談なんてやらなきゃいけないんだろう。

せめて来年だったらよかったのに。そしたら私は……。


「でも今朝、先生に頼んで順番はあなたを最後にしてもらったからね」

晴江さんが買ってきたものを次々と冷蔵庫に入れながら言う。


「美波がそうしてほしいって言ってきたの。ほら、あの子の友達ってうちの事情を知らないでしょ?私が保護者としてあなたと一緒にいるところを見られたくないみたいなの」


たしかに、美波のお母さんと私の保護者が同じだったら絶対に怪しまれるし、今まで隠してきたことがすべてバレてしまうと思う。


「高校生って色々と多感な時期だし、美波も探られたくないのよ。あなただってそうでしょう?」


言ってることは十分理解できるし、美波の気持ちも分かる。でも、私のことを公(おおやけ)にしたくないのは、晴江さんも同じ。


母親代わりだけど母親じゃないし、美波と同い年だけど私は娘じゃない。

近所の人たちにも角が立たないように上手く説明しているし、どうしたって私はこの人たちの輪に入ることはできない。

また頭がひどく疼いてきた。ズキズキ、ズキ。まるでハンマーかなにかで叩かれてるみたいな感覚。


「本当に具合が良くないなら薬でも出しておくけど」

私は痛みを必死に我慢して「平気です」と答えた。


平気です、大丈夫です、気にしないでください。

私はこの家にきて何度その言葉たちを使っただろうか。


角が立たないようにしてるのは私も同じで、弱いところは見せられない。

弱いと認めたくない自分がいる。