それから授業がはじまって俺はだらけた体勢でノートを取りつつも、半分以上の時間を寝て過ごした。


そして四限目の古典は最も憂鬱な授業。先生はチクチクと口うるさいし、つねにマークされている俺はことあるごとに指名されて朗読をさせられる。

そんな授業を受ける気力が湧かずに、チャイムが鳴る寸前で俺は席を立った。


「あれ、どこ行くの?」

「ダルいからふけるわ」

沢木にだけ告げたはずなのに、周りにいた奴らが次々と会話に乗ってくる。



「え、悠真サボるの?私も行きたい」

「次、古典だしな。この際みんなで早退して遊びにいかね?」


一気にどっと騒がしくなる教室を横目に俺は「はいはい、じゃーね」と、あっけなく流してそのまま廊下に出た。



すでに四限目がはじまる一分前。廊下は休み時間とは違い人の姿はなく、歩いてるだけでもかなり浮く。

近くにある階段を使えば楽なのに、俺はあえて遠回りしながら一組のほうを目指した。


廊下側にある窓は全部で四つ。通りすぎざまに中を確認したけれど、海月の姿がどこにもない。



「なあ、岸って休み?」


ちょうど知り合いの女子が廊下側の席に座っていたから聞いてみた。



「え、美波ならあそこに……」

「じゃなくて、海月のほう」

「えー知らない。でも今日は来てたよ。多分」


多分ってなんだよ。もう四限目だぞ。どんだけ影が薄いんだよと思いながらも、「ふーん。分かった」と素っ気ないふりをして俺はあいつを探しにいった。