中庭はどの教室からも見えるようになっていて、目立つ奴らは自販機を利用しに行くだけでもわざわざあそこを通る。不自然に甲高い笑い声を響かせて、自分ここにいますよ、アピール。

目立つ女子は大体自分たちのランクが上だということも分かっているので、見せ方もうまい。

よって、大抵の男子は簡単に釣られてしまう。


「なに買いにいくのー?」

風が冷たいというのに、沢木は窓を開けて声をかけていた。


「飲み物だよ。温かいミルクティー。沢木くんにも買っていってあげようか?」

「えーミルクティーとか甘いじゃん」

「そこが美味しいんだよ、ね?みんな」


女子たちはきゃっきゃと笑っていて、沢木も鼻の下を伸ばしている。そんな姿を俺は冷めたように見つつ、「ねえ、佐原くんにもなにか買っていこうか?」と、聞いてきたのは、女子の中でもリーダーシップをとってる岸だった。


俺、佐原くんって呼ばれてんだ。

っていうか、話したことあったっけ?みんなで騒いでる時に交ざってたことはあった気がするけど、別に友達というわけじゃない。


「いらね」

語尾を真っ二つに切るような返事をした。


するとフォローするように「はいはい!やっぱ俺いる!ミルクティー飲む」と、沢木が身を乗り出しながら答えてくれて、俺は視線を教室に戻した。


机に頬杖をついてスマホを確認してみたけど、あいつからの返事は相変わらずない。

そんなに気になるなら一組に見にいけばいいのにと、自分自身に呆れながらも、あいつはひとりを自ら好んでいるように感じるから。

俺が会いにいって変に悪目立ちはさせたくない。