「お腹すいたからなにか食べにいかない?」
海月を探すように空を見上げていた俺に気づいたのだろう。そう言って歩き出したのは、岸だった。
「あ、じゃあ、俺のバイト先に行きましょう!めちゃくちゃ旨いですよ」
「うん。行く行く」
勝手に話を進めて三鶴も俺を追い抜くように歩く。
「いや、俺、蕎麦食えねーし」
三鶴は今でも海月が働いていた店でバイトをしていた。
年齢を偽らずに堂々とできるようになったからなのか、俺以上にバイト三昧だけど、ゲームをしてる時よりも三鶴は生き生きしてるような気がする。
「蕎麦以外にも天ぷらとかあるから大丈夫だよ。それに店で一番人気のメニュー見てみたいでしょ?」
「なに?」
「満月蕎麦」
その瞬間。柔らかい風が俺の横を通りすぎていった。