「ねえ、佐原」

私は東の空を見上げながら問いかけた。


本当は言おうか、言わないか、ずっと迷っていたことがあった。だから、ここに来てから決めようと思った。



「私、宣告された時にもしかしたら脳腫瘍は遺伝性のものかもしれないって言われたの」


自分の中だけで留めておこうと思っていたけれど、やっぱり佐原には話そうと決意することができた。



「10代でこんなにも進行してしまうのは稀だから、可能性はあるって。どこの誰かも分からない父親からの遺伝かもしれないし、母からの遺伝かもしれないし、それは確かめようがない」

「………」  


「でも私、遺伝性かもしれないって言われた時、真っ先に本当はお母さんは私と同じような病気になって、私を捨てたんじゃなくて、育てられなかっただけなんじゃないかって、そんな考えが浮かんだ」


私の脳裏に焼き付いているのは、やっぱりどうしたって、頭を抱えていつも眉間にシワを寄せて、私に見向きもしてくれなかった母の姿。 


嫌われてると思ってた。私なんていらないんだって思ってた。

でも、もしかしたら、そうじゃなかったのかもしれない。