そして千葉県にある犬吠埼と到着した。バスを降りてもまだ空は薄暗くて体感気温は3℃くらい。


私たちは事前に調べておいたルートを元に左へと進み、道なりになっている下り坂の道路を突っ切ると、前方に高くそそり立っている白亜(はくあ)の灯台が見えてきた。


中には展望台があり、九十九里にちなんで99段の階段があるらしい。けれど私たちは灯台には向かわずに、潮風が濃い海辺のほうへと足を進めた。


小石が無数に転がっている浜辺を佐原に支えてもらいながら歩き、私たちはそっと砂の上に腰を下ろした。



「寒い?」


佐原は私を気遣い自分のしていたマフラーを私の首に巻いてくれようとしたけれど、「半分がいい」と、私は佐原に近づいてひとつのマフラーを一緒に使った。



時刻は現在、5時40分。


まだ夜が明けないこの場所になぜ来たかというと、佐原が私の言ったことを覚えていたから。



――〝朝日が一番綺麗な場所になら行ってみたい〟


ここは関東最東端の地であり、どこよりも一番早く日の出を迎える場所。

もちろん私のために佐原が調べてくれて、こうして私をここまで連れてきてくれた。

日の出まで、あと5分。だんだんと東の空の色が変わりはじめてきている。