きっと、誰でもよかったのかもしれない。でも、他のヤツを頼るなら俺がなんとかしたいと思った。


普通になんの経験もない俺は、ただただ必死で。とりあえず透明みたいに白い肌だけは傷つけないようにしようって心掛けて。

『大丈夫?平気?』って、ことあるごとに確認して、自分のことなんかよりも彼女の気持ちが満たされることだけを考えてた。


そして、終わったあとも俺が聞いたのは『大丈夫?』だった。



彼女はずっと物思いにふけるように天井を見つめていた。


濡れていた髪の毛もいつの間にか乾いていて、さらけ出されている綺麗な身体に今さら目を逸らしながらも、『ごめん』なんて言われれば無理やりでも理由を聞いてやるつもりだった。


なのに、それなのに……。

 

『ありがとう』 


薄開きな唇を少しだけ上げて、浅く切なく、右目から一筋の涙を流してそう言った。
 


その瞬間、俺の中でなにかが弾けた。



それはズルいだろって。



これからなにかが始まるかもと期待して。

頼られたから仕方なくなんて言い訳できないほどの熱さを残して。



ありがとうなんて、最後の別れみたいに言うから、絶対になにがなんでも関わってやろうと決めた。



嫌われても、迷惑がられても、勝手に、そう決めた。