「そういえば沢木がさ、岸との仲をなんとしても取り持ってくれってうるさくて」
沢木くんって私は話したことがないけど、佐原といつも一緒にいる友達だし今も同じバイトをしてるから、よく名前は出てくる。
「沢木くんって、美波のことが好きだったの?」
「さあ、顔がタイプなんじゃね?よく分かんないけど」
佐原はあれだけ私に積極的だったのに、人の恋愛にはあまり興味がないようだ。
「でも美波は歳上でハイスペックの人じゃないと無理って言ってたような……」
すると、何故か佐原は嬉しそうに口角を上げる。
「そういう話も岸とするようになったんだ」
美波たちとしっかりと話せた日の夜。私は佐原に電話でそのことを伝えた。
佐原はずっと家族関係のことを心配してくれていたし、ちゃんと話すべきだと背中を押してくれたから、私は病気のことも本音も打ち明けることができたんだと思う。
あの場にいなかった忠彦さんも今では頻繁に病室へと来てくれるし、時間が合う時には四人で話すこともある。
私が絶対に入ることができないと思っていた三人の中が、こんなに優しい場所だったなんて、佐原がいなかったら私は知らないままだった。