「……海月」
晴江さんが私の名前を呼んだところで、病室のドアがガラリと開いた。そこに立っていたのは……。
「み、美波?」
いつからそこにいたのだろう。美波の手には美味しいと有名なシュークリーム屋さんの箱。
もしかしたら……美波も私と話そうと病院に来てくれていたのかもしれない。
「全部、聞こえてた」
美波が潤んだ瞳で、私の元へとやってくる。
「遅いのよ、本当のことを言うのが」
――本当は家族がほしかった。
美波は私からこぼれ落ちたその言葉を、ずっと待っていてくれたのかもしれない。
「……ごめん、なさいっ……」
「なんで謝るのよ、バカ」
「……っ」
美波とはすれ違ってばかりだったけれど、姉妹みたいに話せたことがあったはず。
私は気づくのがいつも遅い。
遅すぎたけど、言ってよかった。話してよかった。
今まで胸につかえていたものがスッと消えていく。