「本当はあなたが来てすぐに施設に預けようと思ったの。でも姉さんとは姉妹だし、あなたは私の姪だし。きっと姉さんも私に頼りたくはなかったはずなのに、そうしなきゃいけなかった理由があるんだって言い聞かせながら、あなたを六年間育ててきたつもりではいる」


晴江さんは以前、私のことをもうひとりの娘だと言っていた。

きっとそれは大人の事情が絡んだ建前だったし本心ではなかったし、今でもそんなに私たちは綺麗な関係ではない。


でも、私はこの六年間たしかにあの家で育ってきたし、こうして16歳の私としていられるのは、間違いなく母親代わりをしてくれた晴江さんのおかげだと思う。



「でも、あなたにきつく当たったこともあったし、私が一番大人げないことをした時もあった。本当にごめんなさい」


晴江さんが深く頭を下げたので、私は全力で首を横に振った。


私はあの家が嫌いだった。私の居場所はここじゃないから、早く出ていくことだけを考えていた。


でも、でも本当は……。




「私、羨ましかったんです」


この気持ちを、感情を、私はずっと認めることができなかった。



「晴江さんや美波や忠彦さんみたいに、ちゃんと繋がってちゃんと切れない家族が……本当は欲しかったんです……」


母に抱かれている私の写真が涙で濡れていく。