「こんなことを言えばあなたを傷つけてしまうかもしれないけど、誰の子かも分からない赤ちゃんを未婚で産む姉さんに対して私は心の中で勝ったって思ったの」
晴江さんが苦しそうに言葉を吐き出した。
「私はちゃんと順序も踏んでみんなから結婚も妊娠も喜ばれたけど、姉さんはそうじゃなかったから。初めて姉さんよりも上にいるような気分になってた」
「………」
「でも、この写真を見て思った。姉さんは周りの目なんて関係なく、お腹に宿った命を当たり前みたいに産みたかっただけだったんだって。きっとそこに覚悟は絶対にあったと思う。あなたを育てていくっていう決意も」
母に対して劣等感を抱きながらも、晴江さんは誰よりも母のことを気にしてくれていたんだと思う。
いつも持ち歩いている手帳に、この写真を挟んでいてくれたのがなによりの証拠だ。
「姉さんにどんな事情があって、どんな変化があって、あなたを私に預ける選択をしたのかは分からない。勝手だと今でも思ってるし、言いたいことは山ほどあるけど……。あなたのことを中途半端な気持ちで産んだわけじゃないってことは、この写真からも、姉さんの性格からも分かる」
私も初めて自分の赤ちゃんの頃の写真を見て。私を抱く母の顔はしっかりと〝お母さんの顔〟になっていたから、ちゃんと私を産んだ時に愛はあったんだなって、分かってよかった……。