そのあと俺は海月の温もりが消えないようにずっと手を握っていた。
「……佐原……?」
目を覚ました海月は、自分が倒れたこともここが病院だということも分かっているようだった。
「ごめん。私また……」
「いいんだよ。気にすんな」
俺は海月の手を握ったまま笑う。すると、海月はじっと俺の顔を見つめた。
「……泣いた?」
「え?」
「目が赤くなってる」
一応、顔はトイレで洗ってきたはずなのに。俺は海月を不安にさせないようにまた笑顔を浮かべる。
「泣いてねーよ。目にゴミが入ったんだよ」
赤さを隠すために目元を擦ると、海月が止めるようにしてベッドから起き上がった。
「ま、まだ寝てろって……」
「大丈夫」
そう言って、海月は俺の瞳をなぞるようにして触る。
「ごめんね。心配かけて」
違う。ごめん、なんて海月が言うことじゃない。
誰も悪くない。憎いのは、海月を苦しめる病気だけ。