海月は大学病院へと運ばれた。俺は一緒に救急車に乗り、その間ずっと声をかけ続けているけど返事はない。
「海月、おいっ、海月……!!」
ストレッチャーに乗せられている海月の口には酸素マスクが装着されていて、危険な状態だということはすぐに分かった。
「付き添いの方はここまででお願いします」と、引き離されるように看護師に言われ、俺は海月が入っていった救急処置室の扉の前で立ち尽くした。
足が、指が、全身がガクガクと震えていた。
さっきまで笑っていたのに。抱きしめ合っていたのに。キスをしたのに、今は海月がひどく遠い。
もし、海月がこのままいなくなったら……?
ずっと考えないようにしてた怖さがじわじわと押し寄せてくる。
そのあと、どれくらい時間が経ったかは分からない。暫くして救急処置室の扉が開くと、そこから海月の担当医である先生が出てきた。
「海月は……っ!?」
俺は詰め寄るようにして聞いた。
「まだ自発呼吸は弱いけど、一命は取り留めたよ」
その言葉に、俺は一気に身体の力が抜けてしまった。