軽く触れた唇を離して、もう一度確かめるように重ねる。
そして見つめ合って、もっとすごいことをした経験があるのにキスでこんなにも恥ずかしくて緊張してる自分がいて。
海月も同じ気持ちなのが瞳を見て分かったから、お互いに照れてしまって吹き出した。
「ケーキでも食べようか」
放置したままのサンタとトナカイのメレンゲドールが切なそうにこっちを見ていた。
「うん。そうだね」
「待ってて。今取り皿とフォークを用意してくる」
俺は海月の身体から手を離してキッチンのほうへと向かった。まださっきの余韻で鼓動が速い。
甘いものは大好物だけど、なんだか胸がいっぱいですぐに食べられなくなってしまうかも、なんて考えていると……。
バタンッという、妙な音が背後から聞こえた。嫌な予感がして、おそるおそる振り返る。
「……海、月?」
そこには床に倒れている海月がいた。
「……海月っ!!」
駆け寄った時には、すでに海月の意識はなかった。
揺さぶることは危険だと思い、俺は無我夢中でスマホを取り出して救急車を呼んだ。