俺は洋服のポケットに手を入れて〝これ〟をいつ渡すべきかを考えていた。すると、海月の視線が突然、窓のほうに向く。



「ねえ、見て」

確認するように外を見ると、天使の羽のような雪がひらひらと空から舞っていた。


「私が言ってたこと、当たったね」


それは20年ぶりのホワイトクリスマス。


俺も今までクリスマスが特別だと思ったことはなかったし、なんとなくみんなで騒げればいいと思ってた。

でも今日のクリスマスはいちいち想いが込み上げる。

きっと隣に海月がいるからだろう。



「じゃあ、本当に降ったからいいものあげる」


俺は海月の肩に触れて、くるりと後ろを向かせた。

そしてポケットに入っていた小さな箱からプレゼントを取り出して、海月の首につけた。



「え……これって……」

海月は窓に反射して映る自分の首元を確認した。


そこにはシルバーの華奢なチェーンに、キラキラと輝くガラスのペンダントトップが付いていて、中には海を漂うように泳ぐ二匹のクラゲ。



「クリスマスプレゼント」


ずっと頭の片隅に残っていた水族館での海月の姿。

あの時は買うことができなかったけど、いつか海月につけてほしいと思ってた。