「だってそうでしょ。余命三か月ってことはその前に死ぬ確率だって十分にあるってことじゃない」 

「だったらそれ以上に生きる確率だってあるよ」

「どっちにしたって長くないってことでしょ」


スタスタと歩き進める岸の腕を俺は強く掴んだ。



「なに?大声出すよ」


「いつまでも意地張ってんじゃねーよ。海月が簡単に本当のことを言えなかった気持ちぐらいお前だって分かってるだろ」


俺は海月が好きだからどうしたって海月の味方になってしまうけど、それでも岸の気持ちだって理解できないわけじゃない。

海月と暮らした六年という月日の中で、岸も我慢していたことがたくさんあっただろうし、積もりに積もった溝が深いことも分かる。


でもこの瞬間にも時間は過ぎていく。

海月を大切に想えば思うほど、苦しいくらい速く。



「……分かんないよ。あの子の気持ちなんて」

岸の抵抗がなくなったので俺が手を離すと、その腕は力が抜けたようにストンと落ちた。