「つか、クラスの奴らがみんなで集まってクリスマスパーティーしようって言ってたけど、佐原はどうする?」


沢木が荷物に貼られた伝票を確認しながら言った。

そういえば誘いの連絡が何人かから来てた気がするけど、忙しすぎて返事をしてなかった。



「俺は海月と予定があるから」


海月は退院したあと、今までどおり病院の薬を飲みながら過ごしている。バイトがある日は迎えにいって、ない日は俺の自宅に呼んで遊ぶことも多い。


「やっぱり岸さんと付き合ってんの?」

「どうかな」

「岸さん二学期の後半休んでたけど、なんかあった?」

「……ただの風邪だよ」

俺ははぐらかすように荷物を黙々と仕分けした。



入院していた時の検査結果を海月に聞くと『良くも悪くもなってなかった』って答えるだけで、あまり詳しいことは話してくれなかった。

もしかしたら、なにか嫌なことを言われたのかもしれない。分からないけど、海月の些細な表情の変化からそうだろうと、勝手に思ってる。




もうすぐ今年が終わる。

そしたら、海月が宣告された最後の月がやってくる。


俺は海月と春を迎える気でいるし、海月が死ぬなんて考えられない。でもそれはきっと、俺が考えることを全身で拒否しているだけ。


時間は待ってくれない。

病気は海月の身体から出ていってくれない。
 

だから、叫びたくなる。


そういう衝動を、俺はこうして忙しく過ごすことで抑えているのかもしれない。