「検査は終わったの?」
「は、はい……」
やっぱり私は晴江さんと話すと緊張してしまう。晴江さんの腕には紙袋が下げられていて、私の着替えを持ってきてくれたんだろう。
「昨日までの着替えは持って帰るから」
「あ、ベッドの横にまとめてあります」
「そう」
私の母親代わりになってる晴江さんは、一番病院に来てくれるし、身の回りのことをしてくれる。でも決してその距離が縮んだわけじゃない。
あれから一度も会ってない美波と、あたふたと戸惑い続けている忠彦さんとは違い、晴江さんの様子は今までどおり変わらない。
だから私の病気を知ってどう思ったか、なんて表情だけで読み解くことは難しかった。
晴江さんは着替えを渡したあと言葉少なく帰っていき、私は再び休憩室の椅子へと腰かけた。
【バイトの時間が早まったから、今日は夕方そっちに行けない】
悲しそうなスタンプとともに佐原から連絡がきていた。
佐原は本当にバイトを頑張っている。そういえば欲しいものがあるって言ってたっけ。
佐原の欲しいものってなんだろう。あれかな、これかな、と色々と考えていると、佐原から続けてメッセージが届いた。
【今日、岸に声をかけてみたけど逃げられた。また明日話しかけてみる】
佐原は美波のことも私の代わりに気にかけてくれている。私は【ありがとう】【バイト頑張って】とメッセージを返して、検査着のポケットにスマホを閉まった。