言い終わると、まるで病室は誰もいないみたいに静かになった。それは呼吸するのも躊躇うほどに。


「……余命って……」


静寂を切るように口元を押さえたのは晴江さんだった。

忠彦さんも戸惑いというよりは理解ができていないように険しい表情で立っている。


驚くのも、信じられないのも当然だ。

もし逆の立場だったら、冗談でしょって思いたくなるほど現実味が湧かないと思う。でも、そんな中で声を荒らげたのは美波だった。



「は?余命?脳に腫瘍?あんたなに言ってんの?」


ベッドの上にいる私のことを睨んで、その手が胸元に伸びてくる。

制止しようとした佐原のことさえ美波は突き飛ばすように払いのけて、その瞳は怖いくらい私をまっすぐに見ていた。


「なんで今まで黙ってたの?」


美波は、私の体調不良に気づいてた。

気づかれていたけれど、それ以上探られないように誤魔化し続けてた。


打ち明けるタイミングはあったと思う。でも私は自らタイミングさえも見ないようにしてた。


迷惑をかけたくなかったから。

頼りたくなかったから。

どれも本当で、どれも違う。



「言わなくていいと思ったから」


私は口を濁さずにしっかりと答えた。