「今日、兄ちゃんとデートだったんですよね。朝からうるさいくらい浮かれてましたよ」

「そうなの?」

「あと母さんが岸さんに感謝してました。『海月ちゃんと一緒にいるようになって、やっとあの子が真面目になってくれた』って。兄ちゃん本当に別人みたいに変わりましたから」


その言葉に、私は洗い物の手を止めた。


佐原は真面目になったというより、考え方がしっかりとしてきた。前は今さえ良ければって感じで、難しいことをあえて考えないようにしてた気がする。

それじゃダメだと思ったきっかけは絶対に私だし、私が佐原の思考を縛っているんじゃないかって、心配になる。



「三鶴くん、早く戻ってきて!」


なかなかホールに帰ってこない三鶴くんのことを清子さんが呼んでいた。「はい、今行きます」と、返事をした三鶴くんは思い出したように再び足を止める。


「そういえば岸さんの送別会をやるって、みんな張り切ってましたよ」

「え?」

「将之さんがサプライズでって言ってましたけど、岸さんは突然言われるの得意じゃなさそうなので。あ、でも一応びっくりしたリアクションはしてくださいね」


私がバイトを辞めるまで、残り二週間。

年内までと言ったのがつい最近のことのように思えるのに、本当に時間が過ぎるのが早くて困る。