「そういえばバイト先に満月って書いてみづきって読む蕎麦があるんだろ」

「まかないでたまに出てくるだけだよ」

「三鶴が旨いって言ってたよ」

そんな会話をしながら、俺はポケットからスマホを取り出す。そして綺麗な満月の写真を二、三枚撮った。



「佐原って水族館の時も撮ってたよね」


ことあるごとにスマホを向けてしまうことが癖になってるってこともあるだろうけど、海月は水族館の時も今も一枚も撮ろうとしない。


「写真撮るの好きじゃないんだっけ?」


「だって、残るから」


海月がぼそりと呟いた。それは自分の姿がって意味なのか、思い出にってことなのかは分からない。けど……。



「ちょっと、私の話聞いてないでしょ」

俺が海月にカメラを向けると、怒ったように顔を隠されてしまった。


「残したいから撮らせてよ」

「嫌だよ」

諦めずに何度も頼んでみたけど、海月は許可してくれなかった。