「お前って、変なの好きだよな」
俺は日中でもあんまり直視したくない。
「なんで?これカエルだよ」
「普通はきゃーとか言って抱きついてくる場面だろ」
「そうなの?」
海月と生物準備室にいてもなにも起こらないことが分かったので、俺たちは場所を移動するために暗闇の廊下に出た。
「夜の学校って静かだね」
昼間はあれだけ騒がしい校舎も、今は物音ひとつしない。
「やっと怖くなった?」
「ううん、落ち着く」
なんだか背筋を伸ばして廊下の真ん中を歩く海月は新鮮だった。
いつも学校では目立たないように過ごしてることが多いし、廊下で見かけても端のほうでうつ向いて歩いてる姿しか見たことがなかったから。
次に俺たちが足を止めたのは、海月のクラスである一年一組の教室だった。暗いだろうと思っていた教室は月明かりに包まれていて、机や椅子のシルエットが床に映し出されている。
「うわ、月すげー」
窓から見える満月がかなり近くに思えて、こんなに立体的に見たのは初めてかもしれない。